爆裂(上、前)/鈴木
ろちろとなにかが触れていた。スカートの中へ腕をねじ込んだ。なかった。重い感触が肛門を襲った。懐いていた人間から蹴り飛ばされた犬のごとき声を上げて振り返りざま裏拳を放った。空ぶった。扉があった。繰り返される
――やめて。やめて。
が響いていた。やがて泣き声に変わった。
蛾が舞っている。六歳児の掌に収まってしまいそうな大きさのそれは暗がりの中をゆたりゆたりとたゆたう。地上へ行く気配はない。戻ってくるまで出るなと言い残して茜は去った。雨音はとうに聞こえない。差し込む光は弱まり闇との区別も曖昧に物の輪郭をかろうじて照らした。体育座りで震える祥平の膝へ蛾が止まった。黒地に白い斑点の散らばる羽を合
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