爆裂(上、前)/鈴木
 
れてきた茜を支えきれずよろめいて背を壁に打ち付ける。ひんやりと吸い付く。零れ落ちてきた湿気が耳から入って口内をひたす。かき混ぜられる。茜は口の端から漏れた水をなめ取ると祥平の突っ張った両足をさすり始める。また唇を押し付ける。身を預ける力が強く肺は圧迫され、鼻腔から出入りする空気が荒々しいビブラートだった。雨音が聞こえる。笑えないくすぐったさが膝頭から内腿へ移動し、ん、という声が出る。ざらついた舌の表面はやわらかく摩擦し合い硬軟のしびれをもたらす。髪が交錯する。どうしてこんなことをするのだろう。扉は古い。緑色の塗料が右側上部で剥げている。その鉄さびの奥でなにか光るものがあった。目だった。ばらばらに粉
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