爆裂(上、前)/鈴木
 
くわかんないこと言う。きらきらしたい、とか、お人形さんが欲しい、とか。……
 これも条件のうちだった。嫌がらず聞いてくれる人に話せば幻も怖くなかった。茜の寝返り次第では頭をなでることができ、やわらかい髪へ幾回も指を通しているうち気づけば墨嵐の轟音にかすかな寝息が混ざり、腿の上の女児は目を閉じていて、スカートの裾から覗く膝裏が白い。自分の体を見せたり触らせたりするのを彼女は拒む。不満に思わないでもなかった。霧の向こう窓の中ほどで日は他の棟を染めて、ただいま、という声がする。
 別の夕方、濃い灰色の雲が一様にふたをする空の下で手を繋ぎ広場を回遊していたときのことだ。なぜいやらしいことをするのかと尋
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