爆裂(上、前)/鈴木
――記憶と幻が混ざって現在ぼくが思い出しているものが正確なのかもはっきりしないのだから、ましてや当時ぼくが見たことを本当にできるわけがない。ただ、あれから誰もいないところで妄想にふけって満悦することが減ったのは確かだ。それから読書に目覚めた。
奥の壁には本棚が三つ並んでいる。
――考えてみれば活字を取り込むことであの悪夢を塗りつぶそうとしていたのかもしれないな。テレビ番組は視覚と聴覚にだけ明瞭に訴えかけてくるから枠の中の出来事という感が拭えず、魔物も芸能人も殺人犯も国会議員もぼくの世界に生まれ変わることで初めて現実になっていた。
小学校卒業までに読んだものは概して右端に収められてい
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