爆裂(上、前)/鈴木
ているので泣きながら笑っているようだった。美しかった。母だった。祥平は全身の痙攣と共に絶叫した。
――それから先は覚えていない。親によれば高熱と打撲と幻覚のおかげで一週間も寝たきりだったみたいだ。特に幻覚は、こうもりがひしめいているだのモヒカンがいきまいているだの夜中にも泣き出して大変だったらしい。結局、母さんは今だって両目とも無事なままだ。
十九歳の祥平は「ハイム高塚台」一○五号にて自室の床に座り棚の上にあった柿の種を食べている。背もたれ代わりのベッドと投げ出した足先にある勉強机は小学校の入学祝いで、成長してからこそ寸法の合うものの当初は部屋に一人でいることがたまらなく不安だった。
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