爆裂(上、前)/鈴木
 
自由自在に分裂・統合し姿を変え不可視となり空を飛翔し他者の命を奪うのだ。祥平は再びテレビを見た。居間があった。居間なのか? 自分がいた。自分なのか? あれも魔人の見せる幻影ではないのか? 熱い。痛い。さらに耳鳴りが始まって頭蓋のきしむ感覚がする。画面で彼が口を動かし、窓へ目を向けた。つられて視線を移す。
 夜空に赤い月がアメーバみたく広がっている。一端が鋭く伸びて地へ落ちていく。A棟の屋上に「ん」がいる。黄色く光る罅の入った瞳をこちらに向けて下を指差す。広場では楓があるはずの場所になかった。人がいた。月の切っ先に胸を刺し貫かれていた。血液が目のくりぬかれたくぼみからも伝い口の両端が吊りあがってい
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