爆裂(上、前)/鈴木
 
がいを遂行する義務を感じたけれどもやる気がおきず、風呂に入りたかったが湯の入れ方がわからなかった。居間へ進む。奥にしつらえたテレビの画面はまったく黒々となにも映していない。キッチンに一面を寄せた五人がけのテーブルにも合成繊維によって暖かなくつろぎを提供してくれるカーペットにも、出て行く前と変わった箇所はなかった。左手の和室との襖を取り払った境界には人の通る隙間を残してソファが置かれていた。寝よう、と、飛び込む寸前に気付いた。なにも映していない?
 ――おかしくない?
 魔人「ん」の情報を、疲労の極に達した頭で思い出す。成仏できない死者たちの王であり闇に生ける悪人共を操る神でもある「ん」は、自由
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