爆裂(上、前)/鈴木
 
かきたてられた。無差別な視線が次に留まったのは居間の扉だった。感情の矛先を定めた彼は雄叫びを上げて走りだした。見事なクラウチング・スタートだった。五歳児は木枠に激突してもんどりうった。両手で頭を抑えると尻の痛みが活性化し逆もまた然りであったので片手ずつ両部へ当てるという埴輪のごとき姿勢で悶えた。そのような顔で悶え続けた。声は発情したアザラシに似ていた。
 取手を回すと開いた。部屋の中に音や気配はない。入ってすぐ右の対面型キッチンはゴミ袋のほか手や目の届かぬ代物が置いてある。とても欲しいお菓子も勝手につまみ食いしているのが以前ばれてからは棚の中から上へ移されてしまった。反対側、洗面所で手洗いうがい
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