爆裂(上、前)/鈴木
く姿をちらと見て階段を駆け上がる。プラスチックの籠に入ったビニール袋は言葉通りの場所にあり、ねぎ、キャベツ、はくさい、にんじん、ナス、ピーマンが、色鮮やかに淡色ばかりの視界へ飛び込んできた。歯を食いしばって籠ごと家に入る。うっとりさせる生活のにおいが馥郁と漂っていた。かいだことがあるけれども、かいだことがなかった。
玄関は暗い。照明スイッチには手が届かない。蛍光灯を付け放したリビングから扉のガラスを通して光は廊下に注いでくるものの源を離れるにつれ蝋燭の火あるいは西洋の剣みたいに細まって自分のところまで届かない。眉をひそめる。違和感を抱くこと自体への違和感が彼を揺さぶっていた。右壁に飾られたシャ
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