感覚器倒錯的迷走期/木屋 亞万
 
長する
「象二頭はいったな」と嗅覚は判断した、かなりの大物である
左足を5回前に出したくらいのところで
河原にコンクリートの壁によじ登るように、白い象が二頭並んで立っていた
視覚が嗅覚にアッパーを食らわすと、嗅覚による幻覚が消え、一本の大きな金木犀が現れた
蛍光橙の花をつけ、河にしなだれるように生えている



昼、街を歩く
左脳が金木犀の匂いにまだ反応している
「大変だ、我々は完全に包囲されている」とか言う
金木犀の香りが左脳により幻覚化され、糸煙のように絡み合いながら漂っている
よく見ると細長くなった「丸裸」「全裸」「うなじ」が道行く人に巻きついている
という聴覚の
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