遅れてきた青年の楽譜/《81》柴田望
遅れてきた青年》はなり損ねた軍神に羨望する 少年を集わせ 東大法学部へ進み施設長の英雄になったが、思春期の分身に腹を刺される 成り行きさえ防げぬ《いま》の渦の目で《まだはじまっていない》がかれを生かす ああ、戦争が始まろうとしているのに 終わってしまった情事にしか興味がなかったという点ではれっきとした不倫だ かれはかれを刺した一人とは別のさらにもう一人の自分に出会い意気投合 さあ、このうちだれだスパイは? すると影武者は実体化を恐れ首を吊り 伝説になれたのはかれを苛む増殖する分身だけ すると玉手箱ぱかり開き、びっくりしたのはアルファルファ爺さんのスポンサーだけ 歩みののろい浜辺に亀
シス
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