「お隣さん」/菊尾
か利かない有様である。
築云十年の安いマンションで交通の便は駅まで徒歩10分と微妙な距離だが家賃が安いので借りている。
「隣に住んでいる田中ですけどー。」
ああ、田中くん。隣には田中という大学生が一人暮らしをしていた。
この春に越してきたばかりで最初彼が挨拶に来てくれて話したときになんとなく気が合った。
何か用事でもあるんだろうか。
「はい。」
僕はチェーンをしたままドアを開けて覗くと確かに彼だったので、チェーンを外してドアを開いた。
ボーダーのTシャツにジーンズ姿の彼は一見すると爽やかだ。ただ男にしては全体的に細身か。
「どうも。ちょっとマヨネーズ貸し
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