影のない犬/木屋 亞万
 
々元気もりもり人間ではないから
大して差がないような気はするのだが
生気というのか精気と書くのかわからんが
とにかく今にも死にそうな生命になった
私を隣家に預け、入院していたくらいだ
自分の人生において最初で最後の死人は
おそらく爺さんだろう
それにしてもどちらが先に逝くのだろう


今朝、自分の影が海に向かって走っていくのを見た、爺さんの影と一緒だった、連れ添ってというよりもどちらが先に目的地に着くか競い合っているような走りっぷりだった、二人競い合うようにしてこんな風に走るのは何年ぶりだろう、ほら、すぐそこにかもめがたくさん飛んでるよ爺さん、あの船に乗っているのは爺さんの同級
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