うみからうまれたつばさ/nakahira
 
も消えている事を知っていた。
フィルターに苦味を感じ、吐き出す。
重たそうに地面に転がった吸殻を、踏みにじりながら、夢から覚めた心地を感じていた。
そして新しい煙草を一本、箱から取り出そうとして、やめた。
男はもう、帰路と濡れた服の始末しか考えていなかった。
やがて振り返り、離れていった。
(はなれていった)(かえりゆく)
(かえるって?)(ぬれた)
(わたしたちいつもぬれて)
(わたしたちのかえるばしょ)
(どこでもないどこかは)(ないよ)
(かえるばしょなんてないよ)
(にがいだけ)(ゆめからさめないで)
(かんかくがとけていく)(かんかくって?)
(ゆめ?)

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