うみからうまれたつばさ/nakahira
が過ぎれば、虚しさは空洞を隠さない。
空洞は両目から塩水を漏らす、だから、
たとえば、
薄汚れたわたしにでも、翼があればいいのだろう。
今に薄い皮膚を破って生えるさ、荷の無い背中だからこそ。
翼があれば空や、海に、町に、何処へだって、
一時でも、冷たい砂の浜に埋もれることもないさ、
望めるさ、この体を投げ放てるのだ。
(つばさ?)(つばさ)
(これはつばさをもとめている)
(ここにつばさをもとめている)
(もとめる?)(ここいらに)
(どこへだって?)(どこに?)
(せかい)
(ここじゃないどこか)(どこでもないどこかへ)
男は咥えていた煙草が濡れ、すでに火も消
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)