うみからうまれたつばさ/nakahira
そうやって刺す雨に打たれて、雨避けを考える事も無かった。
男のコートは体温を手放していった、耳は潮騒に当てていた。
(そら)
(なみ)
(わたしはなみ)(わたしはあわ)
西日が遥か海上を照らしていた。
鳥は彼らが思う彼ら自身を無くしたか、探してもいないのか、
曇天と光をただただ裂いていく。
それは自由そのものだった。
(じゆう)
(そらにじゆう)(わたしはなみ)
(わたしはそらじゃない)
(わたしになみ?)
(わたしは)
男はずいぶんと前から、長い間、同じ事ばかりを考えていた。
鳥になりたい、なんてくだらない冗談だ。
口に出した、その後を寂しさは待つ。
寂しさが過
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