風を見ると懐かしい/木屋 亞万
りました
人間の私は頭の中に
はっきりと蓄積していく過去を
忘れることも反芻することもできます
未来をしっかりと見据えることも、
さりげなく目を背けることもできます
私の器官は独立し、
自分のスペースを手に入れ
分業を始めましたが、
私の意思から感覚は離れていきました
いつの日か私は彼女に出会い
そっと触れることができるのです
保障はありませんが
風の頃よりも可能性があります
どのような苦辛を負うとしても
私が生まれた理由は
彼女と物質的に触れ合いたい
という欲望を満たすためですので
耐え忍ぶことができました
私はもうすぐ彼女に触れます
多分、
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