せかいをいきる/吉田ぐんじょう
 
るのである
床に直に積んである本を動かし
別の位置へ移動したり
くしゃくしゃに落ちている服をひろって
たたんでまた置いたり
そんなことをしているうちに
部屋のあちこちから幾つも幾つも
使い捨てライターが出てきた
腹のあたりにどこかの店名が印刷されている
見覚えのない店名ばかりで
なんだかぼんやりしてしまう

この家には
実は何人ものわたしが
ひしめきあって
存在しているのではないだろうか
ただお互いに見えないから
独りだと思っているだけで

考えながらフリントを回す
ぢっと音がして
意外なほど綺麗な火がついた

ぼんやりと照らし出された部屋は
どこか
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