器と器/木立 悟
くなり
熱の行方に咽を鳴らす
器の辺に映るつらなり
鉱物表にひらかれる冬
こぼれてはこぼれては根づく光
つぶやきつづける森になり
どこにも行けない羽に埋もれ
他の森より早く夜になる
花も茎も根もない草に
鳥が一羽眠っている
金に回る飛沫の風車
水音が作るけもの道
声と緑
岩と雷
欠けたしずくが戻りゆくさま
牙と牙の暗がりを揺らす
癒すもののない裂けめに冬は集まり
新しい冬を受け入れる
静かに静かにむらさきは降る
治らぬものにむらさきは降る
水が水をかきまぜる
器の底の器のかけら
ゆうるりと動き鳴り響き
夜のうつろ
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