ルネッサンス/aidanico
 
ば善い」/その髭の男は言った/暖かさに浮遊した私の心はいつの間にか彼の元を離れ/隣には八重歯の男や眼鏡の男やハンチングの男などが入れ替わり立ち代わりに坐り/哲学や理論や他愛も無い言葉のなかに陳腐な愛を囁きながら/彼らは彼らの新鮮な心臓を私に差し出した/私はそれを恍惚の間に盗んだ/かと思えば彼らはいつの間にか私の心臓を細切れに刻み/カルメンだと思っていた私は幾人ものホセに貫かれていた!/自負心のつよい私は侮辱を感じテキーラだとかウォッカだとかジンだとかありとあらゆる酒を/男たちの顔面に浴びせた/その強い酒たちはは紛れも泣く私の涙だった/ショパンの仔犬はいつか感傷的なラヴェルに変わって私の心臓のない胸
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