通俗ホラー詩 「鉄輪」/右肩良久
のディスプレーを見ると、ニュース記事の中に必ず人の轢死の記事が混じるようになった。毎日、必ず一本はある。私は覚えていないが、子どもの頃一緒に轢死事故の現場を見たことがある、と亡くなった父から教えられた。だからかどうか、記事を目にすると、鼻の奥に生臭い臭いが溜まる。急ブレーキで鉄輪のきしる音が聞こえる。心臓が高鳴り膝が震えてくる。それなのに私はニュースの死者の名前と年齢を一字一句間違えずに覚えてしまう。それが消えない記憶として堆積し続ける。あの日からのことだ。ホームに立って列車を待つ大勢の人々はみんな、やがて私が恐ろしい殺人鬼と化すことを知っている。血まみれになって、興奮を抑えきれずに高笑いすること
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