通俗ホラー詩 「鉄輪」/右肩良久
 
ことを。せめて裸を美しく見せるために私が値段の高いボディソープを使い、毎夜ダンベルを振っていることも。そんなことになる前に私を殺してしまおうとする人も出てくる。今日も香水の強い中年の女から、列車が入るホームの端で背中を押された。かろうじて踏みとどまると、後ろで舌打ちの音がした。当然誰もが知らぬ振りをしている。私は振り向くどころか隣の人へ顔を向けてみることもできないけれど。

 どうしようもない。しかたがない。私はスターバックスの片隅でコーヒーを飲みながら「でっかいメロン」の歌を呟くように歌う。
 めろめろメロン、虫の息
 すやすや子猫、お尻小さな子猫たち
 だけど、でっかいメロン、でっか
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