通俗ホラー詩 「鉄輪」/右肩良久
 
うか、肺から空気を抜くことにしよう。肋骨と肋骨の間に、横向きに寝かせた刃をすっと入れるぞ。吹き出した鮮血と人智の根源たる空気の奔出をだな、お前はお前の顔に浴びる。それからどうだ、そいつのポケットから携帯を抜き出して、メールとか、声に出して読んでやれよ。「今日、あんなこと言われてちょっとうるっときちゃったよ」とか「今夜は食べてから帰るよ。迎えヨロシク。駅からtelする」とか書いてあるから、遠慮なく豪快に笑ってやれよ。それから後は、もういい。心臓はうっちゃって置こう。お前は全裸になって商店街へ飛び出せ。解放されるんだよ。恍惚として涙が出るんだよ。「ワタクシはカミである」とか叫んでみるか?いかにもいかに
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