夕日夕食/木屋 亞万
そういえばウェルダンで夕日を
出してくれる店があった
まだやっているだろうか
私がかつて食べたのは
秋の夕日だったはずだが
その後の焙じ茶の味が
忘れられなくて
夕日の味を覚えていない
夕日狩りが仕事の旦那さんと
夕日の郷土料理を作る
笑顔が甲高い奥さんの店
そこで譲ってもらった
和風のマグカップと
焙じ茶の茶葉
彼が秋に取り残される前に
一緒に食べたのが
夕日のステーキだった
もう季節が一周して
彼を周回遅れにしそうな私
かなしみの角が取れて
焙じ茶が染み込んでいく
夕日は一日一塊取れる
鯨の何倍もある肉を
人々は分け合う
夕日
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)