喪失の仮面/二瀬
ないよ、そう言いながらも
思わず両腕を抱いていたら、
記憶にはない君、の体が触れてきて
硬く結んでいた腕がいつの間にか、ふり解かれている
生きていると感じるのは
つなぎ目がないと分かった時
ねえ、君
過去の概念もない、未来が食い込んだ今も
全て超えて、
仮面を外さずに私は、見えない部分の表情だけが
いつも変わるのを知っている
錆びた青い鳥籠が店の窓辺に飾ってあって
灰色の羽毛は細かくうねりながら、啼いている
捨て去る事の出来なかった名残だけが
たまっていき、薄汚れていた
仮面の上だけに私はいると思っていた
移り変わる事しか知ら
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