ひかりの海/ホロウ・シカエルボク
 
いまのわたしは?」ぼくは言葉に詰まる「ほらね」
「あなたが見てるひかりの海っていったい何?」
窓の外には、何の変哲もない海があった
信じるってことは存在するってことだ、ぼくは
ただきらめいているだけの海を見ながら繰り返した、ひかりの海はなかった、きみはそこになどいなかった、たしかにその声はここに届いていたのに
ぼくは窓を離れる、窓を離れて洗面所に行く、洗面所には鏡がある、そこにはぼくが映っている、そこにはひかりの海はない
ぼくはバスルームのドアを開ける、からの浴槽がある
そこにもひかりの海はない
あっ、とぼくは息をのんだ
ひかりの海を探して、どれほどの時間が過ぎたんだろう?

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