ひかりの海/ホロウ・シカエルボク
浴槽には小さなほこりが生命のように覆いかぶさっている、いま鏡に映ったぼくは…
「信じるってことは存在するってことだよ」とぼくは言う―言った
ひかりの海なんかほんとうはないじゃない、と彼女は言った
ぼくは洗面に戻った、ぼくは洗面に映っていた、だけどそれは非常にひねくれた残像のようなものだった、ぼくは鏡を殴りつけた、鏡は音すら立てなかった、かすり傷ひとつそこにはつかなかった
ぼくの姿は映らなくなった
信じるってことは存在してしまうということでもある
海からの激しい風が閉ざされることのない窓から吹きつける
ぼくはひかりの海を探した、もうすぐ夕暮れが来るだろう、そしてぼくは
明日も同じまぼろしを信じて窓辺に立つ
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