カランダッシュと電波/木屋 亞万
 
ばかり描いていた私が、何気なく人物を描くようになった。
それまでは目の前にあるものを、好きなだけ時間をかけて描いてきた。
人は待ってはくれないし、技術の稚拙さが目立つので、描く気にならなかったのだ。

手紙によると彼は、この鉛筆を魔女から譲り受けたらしい。
臼に乗って空を飛ぶ魔女の婆さんが現れて、カランダッシュと言いながら彼に手渡してきたらしい。
言葉の響きから私を思い出し、私に手紙を書いたという次第だそうだ。

魔力は遠隔の地でも有効なようで、私はその鉛筆ですぐさま知己を描いたのだ。
魔女に操作されるように、知己が期待していたように、私は人物を描き始めたのだ。
それから、私も
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