名もない花/星月冬灯
 
して、この花を摘んできたのか。

 
 暗闇の中に一陣の風が吹いた。

 身を凍らせるような、冷たい風が。

 マーサは身体(からだ)を抱き締めた。

 
 ぞくり、ぞくり、

 得体の知れない怖さが、マーサの身体を

 駆け巡った。

 土からこもれ出ていた明りが、すっと翳った。

 マーサは目をギュッと瞑った。ぶるぶる震え

 る身体を冷たくなった指で抓った。


 マーサ


 アリサの声が冷たく響いた。

 まるで氷のように。風のように。冴え冴えとし

 た空気になった。

 マーサは、出そうになる声を唇を噛んで耐えた。

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