名もない花/星月冬灯
 
ラと光る種は、小さなマーサの

 掌にのると、ぱっと消えた。まるで花火

 のように、一瞬にして散った。


 だめよ、マーサ。この銀のスプーンで

 掬わないと。消えてしまうのよ。

 
 アリサは赤いリボンの付いた冷たく光る

 スプーンを握らせた。

 そのスプーンで塊を拾うと、今度は消え

 なかった。

 マーサは、幾つも幾つもその種を拾い、

 透き通った袋に入れていった。

 一杯になった種は、より一層光りを反射

 させ、部屋中を照らした。その眩しさに

 目を開けているのが困難なほど、煌々と

 していた。


 
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