「昼下がりの憂鬱」/紫音
的な自然とでできる世界に
ただ新しさだけを求め
飽きたら捨てるだけのために
それでも
それでもこの都市(まち)で
生きていく
すべてを使い捨てて
失うものを得るために
または
初めから得るものなどないことを
忘れてしまうために
たった一つ確かな
立っているはずの地面さえ
暑さと眩暈であやふやになるのに
確かなことなどどこにもありはしないのだ
だから
ここで生きていく
ほんの少し
忘れかけたことさえ
何だったか忘れてしまい
忘却を支えに
流されていく
見上げた空の飛行機雲が
掠れて消えていく前に
掴まえることが
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