「昼下がりの憂鬱」/紫音
 

いつからこんなにも躊躇するようになったのだろう

遠く響く豆腐屋の音
引き売り
誰が買うかわからないけど
顔が見えることで安心するものもあるのだろう
ついつい億劫で
メールとネットで済ませてしまう
顔が見えないことで得る安心とは逆の
出来れば話したくもないので
一生この豆腐屋には縁が無いに違いない
空が飛べないことと同じ
縁が無い

喧騒と静寂が
ビルを挟んで背中合わせの都市(まち)で
静寂は華やかに死んでいく
一年後には消えてしまうテナントのために
人工の楽園が創られる
人の波が訪れ
やがて消えゆく一瞬のために
ガラスとアスファルトと
人工的な
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