衝撃と恐怖/徐 悠史郎
 
った阿鼻をいうのか。なにひとつなくなりはしなかった、かわりに新しいものが生まれた……家のかわりに瓦礫、草木のかわりに灰、人のかわりに炭、皮膚のかわりに糜爛、水のかわりに渇き、時間のかわりに闇、空のかわりに光、母のかわりに死、……、……衝撃と恐怖、白い闇、黒い光……しかしそれゆえ、子よ、あの日の爆煙は美しくなければならない。そのとき母は召されたのだから……衝撃と、恐怖……そのとき私たちの眼は世界の際で折り返し始めた、空と土は振り子の眩暈に沿って空転する……

わたしたち、わたしたち、……いつからわれら、二人となったのか。……ひとりは闇へ、ひとりは光へ……そしてまた入れかわるわれら……くらき淵より
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