蜃気楼/紫音
らないと感じたままに
目が語るのだろう
侮蔑を隠すでもなく
投射するのは
小石を投げるのに似て
相手の脳裏に
波紋をつくる
それでも
殴られるでも
いじめられるでもなく
まるで居ないかのように
過ぎてゆく
無視するほどもなく
周囲の世界に
自分はいない
たまに現れると
鬱陶しいので
ちょっとだけ絡むが
すぐに「居ない」と気付く
だから
世界を傍観する
諦観する
そこに
不在だからこそ
町行く人波に
飲み込まれながら
隔離し隔絶し
居場所がない
わけではない
から
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