水のための夜/あおば
 
消えた
朝になるとボールの底には
温和しそうに並んでる
行儀のよいサルビアの種子
固まってもう動きたくありませんと
言いたそう
外は明るいし
太陽は焼けるように輝いている
もうワタクシ達の居るところはありません
このまま水の底で眠りたい
そんなことを言ってんじゃないかと
考える
外は明るくて
今から芽を出すには眩しすぎて
今から芽を出して育つには遅すぎて
花が咲くのは夏が過ぎて
秋の長雨に気分がむしゃくしゃして
あたまからは水蒸気がもやもやと立ち昇る
10月の語感に相応しくない季節に花を咲かせるのだが
ステンレスのボールの底にへばり付いて動こうともしない

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