消費されるひと/恋月 ぴの
 
空調の整った展示室の良く目立つ位置に飾られていた
昨今の美術ブームとやらの影響なのか
善男男女の行列は途切れる事無く
一端の鑑賞家にでもなった気で連れに解説したり
絵筆のタッチに画家の意思を探ろうとする

そんな一枚の絵画と人々の関わり様を
私はスツールに腰掛け眺めていた
数世紀もの時空を越え
描かれたばかりの鮮やかさで息づく一枚の絵画
そしてその絵画を優れた芸術として鑑賞し
対話を試みようとする人々

たとえ対話が不調に終わったとしても
試みようとした意志は一枚の絵画に生を注ぎ
鑑賞の眼差しはカンバスの裏側まで捉えようとする


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再開発から取り残
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