夏/榊 慧
。時折葛藤が聞こえるのは気のせいだろう。女は恍惚とした顔をしながらもじれったそうに、腕を、斬った。
扇子を仰がれる。ぼんやりと心地よい風に支配、そして束縛される。誰が、壊したの、。知らないわ、わたしを疑わないで。暗転、暗転、暗転、暗転、暗転、暗転、暗転、誘うのは、扇から来る風が伝える青黒い、海と、配線コードのフローリング。夏の香りは、恐らくこういう匂いだ。束縛されてしまおうか、それとも泳ぎきれ、
砕け散った眼球はミステリアスな妖しい美しさをもってして夏の雨にうたれる。幻想的。くぐもった声が激情を掻き乱す。繊細な旋律、やわらかな哲学。指先の傷からあふれ出る妖艶は、きっと赤色と思わ
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