彷徨、巡航(草書、推敲中)/長谷川智子
 

虫醋が喉を刺す
透け入る妙なる馨態(せいたい)
背後に黒き旋律
絞らるゝ雑巾の如く縒(よ)られ
渦巻く無数の惡夢白晝(ちゅう)夢
幾度までも呪殺せる輩の屍體(したい)
斑模様の如き形相
凡(すべ)て沈められし褐色なる原風景
繙(ひもと)きし數多(あまた)の遺書を幾度も讀み漁る
其処には
孤獨なる呟き 時として嗚咽
殺されはせぬかと息を呑みし日々
吐き出さねば吐き出さねば

倉卒(そうそつ)に書き留めし欠片の群
其処に射す一縷(いちる)の光に
當時(たうじ)は未だ 思ひ至らず

寧所(ねいしょ)
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