喪失の森/結城 森士
宵草は首を振って
代わりにこう言った
「あなたは知らなくていいことを知ってしまったのですね」
私が答えられないでいると、また待宵草は言った
「迷う必要はありません、進みなさい。
けれどあなたにはもう、名前は必要ありません」
耳元で形のない鳥が鳴いている
一歩一歩足を進めるたびに
背骨の線に冷や水が走る
感情が意識から分離して
私に背を向けて走り出した
私の意識が森から出ない限り
戻ってくることはないだろう
名前の無い私を呼ぶ声がして
振り向くと
母の顔をした鳥がそこにいた
母の顔をした鳥がそこで
私の顔を見て嗤っていた
私には羽が生えていた
急いで自
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