こころ/二瀬
 
ここだ ここにいたんだ

必死にそう叫ぶので

思わず私は凝視してしまって
今晩の悪夢に挨拶をした

いつの間にか押さえていた
額の
重苦しさを吐き出すように

明日、もしくはすぐにでも
あの靴は捨てられて

私も 誰もが

君を殺し始める


3.

お前はここだ あそこだ 

 本当は すべからく どこでもいい

かつて
私であった者を
私は引き剥がしていき

その後に決まって残される
一つ一つの黒い砂場の模様が
汚れてしまった爪のように見えて
かつて握ったその子の指を
思い出しながら
丁寧に名前を読み上げていく

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