イニシェーション/木屋 亞万
光り輝いていただろう
大きな窓たちは
ことごとく割れ
割れていない窓も
ひどく曇っている
廊下には硝子の破片
鉄骨ネジ釘トタン屋根
踏み締めて進む
「妻は私を馬鹿にしている」
一人はまだそうつぶやいて
「でも戻ったら再婚するんでしょ」
誰かの何気ない言葉に
「ええ今の妻とまた式を」
と弾けるように笑った
私は始めて人が笑うのを見た
気がした
私たち5人は建物の内部を
何一つ改変することなく
バイクを盗みだして逃げ出した
私たちのうち一人が技師で
その方に長けていたので
素早く盗みだすことができた
トンネルの入り口まで
乗り回していたが
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