夜の幻覚/吉田ぐんじょう
 
かたまりや
紐のようなものがたくさんぶら下がるぼこぼこしたものが
くるりくるりと回って消える

理科室で見たホルマリン漬けの瓶だ
学校の一時間目
理科で鮒の解剖をしたからだろうか

妹が寝返りを打つ
組み合わせた両手の隙間から
小さい羊がはみ出している
いまみている夢の断片かも知れない

遠くで兄のうなされる声
女の人が胸の上にまたがって
にこにこしているのが見える

少し開いた襖の隙間からは
誰かの手がこちらまで伸びてきて
湿ったわたしの頬にそっと触れる
やさしく白い手であった
よく見ようとすると白い蛇に変わり
天井まで這い上がって消えた
そういうも
[次のページ]
戻る   Point(10)