夜の幻覚/吉田ぐんじょう
 
うものだろうか

そしてわたしは

いつの間にか眠ってしまったらしい
気がつくと朝で
今日は遠出をするというので
みんな目一杯のおしゃれをしている最中であった

兄が野球帽のかぶり具合を調節しながら
おまえいつまで寝てんだ
と言う
頬に女の人の爪あとがついてる

髪の毛に羊毛が付着している妹は
木綿糸でつくったお手製のネックレスを首にかけ
おねえちゃんはやくしなよ
と笑った

天井裏からぞろりぞろりと
何かが這うような音が聞こえる


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