120階の屋上から150階の空室の窓に荒縄を結んで気が狂った男が綱渡りをしている/ホロウ・シカエルボク
ているらしかった
ガトリング・ガンの弾みたいな雨粒を浴びながら
ふかふかのベッドの上にいるみたいに安らかに眠っていた
重力によって亡き物にされるよだれがひとすじ口元から漏れた
やがて男は目覚めると雨で顔を洗い
昨日と同じ調子でまた歩き始めた
120階の屋上から150階の空室の窓に荒縄を結んで気が狂った男が綱渡りをしている
昨日と同じどんな苦労も感じられない静けさで
(俺には次第にそれはそいつがまともだからこそそうしていることが出来るのではないだろうかと思えはじめてきた)
もしも自分が銃を持っていたなら
当てられないと知りつつそいつに向けて引き金を引くだろう
120階の屋上から
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)