120階の屋上から150階の空室の窓に荒縄を結んで気が狂った男が綱渡りをしている/ホロウ・シカエルボク
 
から150階の空室の窓に荒縄を結んで気が狂った男が綱渡りをしている
そいつは俺の首筋にも正真正銘の怖れを喰らいつかせるみたいだ
俺は綱の上にいる男よりも怖れ乱れている
神様あの男を無事に150階へ届けてはいけない
何故だか俺はそれを強烈に感じて祈り始めた
その瞬間まで神を信じたことなどなかったのだけれど
120階の屋上から150階の空室の窓に荒縄を結んで気が狂った男が綱渡りをしている
朝から激しい雨が降り続いている
そいつはのんびりと歩きながらフラつきもしない



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