120階の屋上から150階の空室の窓に荒縄を結んで気が狂った男が綱渡りをしている/ホロウ・シカエルボク
かざす必要さえ無くなった段階の樹木に
男はなんでもないことのようにずっと歩いていたが
傾斜のせいで歩幅はずっと狭いままだったので
歩いているうちに夜になった
(可哀相に、この男の命運もとうとう尽きてしまうのだ)俺はそう思って
その瞬間をせめて見ないでいようとカーテンを引いて眠りについた
次の日は何も予定の無い日だったので遅くまで眠っていた
目覚めたのは窓を叩く激しい雨の音のせいだった
顔を洗って服を着替え、窓のカーテンを開けた
男は雨に濡れながら中間辺りにしがみついて動かなかった
はじめは動けなくなっているのだと思った、けれど目を凝らして見ると
男はどうやらすやすやと眠ってい
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