ポスティング業務のこと/吉田ぐんじょう
 

存在を発信するみたいに

暗い暗い明け方の海に
頼りなく撒き餌をするみたいに

上司はチラシを少しでも折って入れると
真っ直ぐに入れないと会社の印象が悪い
と言い
上にする面を間違えると
それだと見た目が綺麗じゃない
と言い
果てはわたしに向かって
君は会社を潰したいのか
と言ってきた

怒りがわいたので
この人はきっと潔癖症で
家に居るときはテディベアかなんか抱っこして
永遠にコロコロで部屋を掃除してんだろなあ
と想像してそれを抑えた

チラシはあと少しだった

最後に入った団地のことは
今でもよく覚えている

そこは国みたいに広くて
がさ
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