19才の春/天野茂典
とが愛しくおも
われた。
ぼくはここではじめて質屋に通いカメラを質草に金を借り、その金
で電報をうち、寿司屋をやっていた親父に無心して旅費のたしをお
くってもらったのである。
やはり10000円であった。
春望
それは夜中の特急だった。ぼくたちは北海道から、津軽海峡をこえ
て、日本海側を疾走していたのだった。下車駅は村上だった。
青森県から新潟県に入って間もなくだった。
特急はとてつもなく速く電灯だけが灯った無人の構内に滑り込んだ。
未だ午前2時にもなっていなかった。
ここでも友達の親戚を尋ねての途中下車だった.。
町は完全に寝静まってい
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