19才の春/天野茂典
 
雪をぼくにぶつけては、はしゃいでいた。ぼくたちはや
がてデパートにたどりついた。この冬の北海道放浪でいまがなぜかい
ちばん幸せにおもえた。ぼくはおさない恋人のまえで無垢な19才の
少年にすぎなかった。
デパートにはいった。あたたかった。
ぼくたちはエレベーターにのりこんだ。
数階をのぼると誰も客がいなくなった。そんなときだ。
彼女はぼくの手をとると自分の胸に押しつけたのである。
旭川の旅も終わりの一夜であった。

無賃乗車
        
ぼくたちはなけなしの金をはたきながら旅をつづけていたのであった。
釧路から旭川までは無賃乗車であった。たった2両のディゼルカーで、
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