河原の記憶/小川 葉
 
な姿になって、無力。私は、ヤマメ。水難事故で死んだお父さんとは、私のことです。息子もヤマメになりました。そしてさっき、私と息子の魂が宿ったかげろうを、二人で食べました。息子と、ヤマメの姿になって、ひさしぶりの再会でした。そして今、妻も、淵に身を投じて、死んだようです。妻の魂は、いったい、どこに行ってしまうのでしょう。私と息子のように、魂がヤマメに宿って、再会できればいいのですが。
 私たちを捕まえようとする人間の姿(釣り人)が目に入りました。もうここには居られません。気をつけなさい、と、他のヤマメに教えられました。私と息子は、ヤマメの社会を知らないまま、ヤマメになってしまったようです。まだ、はん
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